そこ、平均台の上? 『猩々緋』
優しさの中に、拒絶が混ざることがある。
自立の中に、孤立が混ざることもある。
「人に迷惑をかけたくない」
そうおっしゃる方は、 自分のことは自分でやる。
人の手を煩わせない。
そんな意思を持って、背筋をすっと伸ばしていらっしゃる。
でも、ときどき私は、その言葉の向こう側に、
「人から迷惑をかけられたくない」
という気持ちまで、少しだけ透けて見えるような気がする。
迷惑をかけないことと、
人に頼らないことは、同じじゃない。
甘えじゃない、持ちつ持たれつ。
私は、そんな関係って素敵だと思う。
誰にもぶつからずに歩もうとすると、
その足の下は、いつの間にか平均台になっている。
先日、YouTubeを見ていて、
「人に迷惑をかけない生き方は、平均台の上を歩いているようなもの」
という言葉を拾った。 なるほどな、と思った。
私は、平均台から落ちてもいいと思う。
「気を遣わないでください」
これも、一見すると優しい言葉よね。
相手に気を遣わせたくない。
そんな思いやりから出る言葉なのだと思う。
けれど、言われた側には、
「お構いなく」
と、そっと線を引かれたように聞こえることもある。
だったら私は、使わせてしまった気を、
ありがたく受け取れる人でいたい。
「お心遣いをありがとう」
そう言えるほうが、
人との間にあるものを、ちゃんと受け取っている気がするから。
迷惑をかけないことより、
迷惑をかけたときに「ごめんなさい」と言えること。
助けてもらったら、
「ありがとう」と言えること。
そして、誰かが困っていたら、
今度はこちらが手を差し出せること。
平均台の上だけが、人生じゃない。
一段下は、グラウンド。
落ちても、地上。

